大和市上和田の小さなピッツェリア〈ピタピザ〉。その厨房に立つのは、少し変わった経歴の店主です。
店主はもともと、アマチュアボクサーでした。バンタム・フェザー・ライトの3階級で戦い、ご縁あって日本チャンピオンにもなりました(二冠)。世界王者・村田諒太選手と同じ頃、同じ舞台で汗を流した世代です。
拳を交える日々に区切りをつけ、次に選んだのはイタリアでした。修行地はほぼナポリ。ローマでも数か月、窯の前に立ちました。
朝から夜まで厨房で働き、それでも性分で体は動かしたくなる。夜中に1時間以上のランニング、現地のボクシングジムにも通い、いつのまにか現地ランキングで3位になっていたこともありました。ピザの手も、走る足も、同じひとりの中で自然と続いていっただけです。
日本に戻ってからは、ブックオフ創業者・坂本孝氏の「俺のイタリアン」や、メゾンカイザーで腕を磨きました。休日を返上して企画の提案までする——まわりからは「変わったコック」と言われる働き方でした。
やがて店主は思います——料理の腕だけでは、社会人としてまだ足りない。そう考えて、畑違いの営業の世界にも身を置きました。始まりは下っ端から。地道に続けるうちに責任者を任されるようになり、多くの経営者に提案を重ねる中で、世の中の仕組みを学ばせてもらいました。格闘技も、料理も、営業も。並べると脈絡のない道のりですが、やってきたことはいつも同じでした——目の前のことに手を抜かず、ただ続ける。それだけです。
そうしてたどり着いたのが、大和市上和田の小さな〈ピタピザ〉です。イタリアで覚えた自家製酵母を継ぎ足しで育て、500℃の窯で焼くナポリピッツァと、生地で具材を挟むブレッドバーガーを、毎日焼いています。開業から、今年11月で丸4年になります。
いまは走り込みの代わりに、店と家のあいだを軽くジョギングして体を整える。派手なことは何もありません。ボクサーの頃からの習慣が、静かに続いているだけです。
だからここのピザには、ちょっとした物語があります。
ジム帰りに、イタリアの話でも聞きに来ませんか。